2021年短歌まとめ

すっかり短歌やってないんだけど、こっちに去年のをログっておく。


1月


2月

頬つたう流れてどうか心まで誰もがきっと気付かぬように


3月

誰がためにほうきで掃いた星屑はかなわぬ願いの後片付け

ふつうとはあなたのことをいうんだよぼくのことではないはずなんだ

お互いがお互いを見る節穴に見限るのは私自身

君が君生き延びているかたわらで私が私イキイキしてる

たゆまなく耐え忍ぶ日々正しくも頼りない僕はただ立ち止まる

明け方に途切れる雨の音さえも僕に仕事に行けよと告げる

内は外、心の壁の内側に外の世界が焼き付いている

やわらかに木漏れ日はらり影の跡どうせ僕らは落ち葉の一つ

不死鳥のからあげ一つ食べたなら永遠の満腹感を得る


4月

空白のむなしさに詰め込めるだけ詰め込んで想像と青春

影の影は僕の形をしていた 心から日が差し込んでいた

梯子外してすみません これ以上僕と仲良くならないでください

お風呂から上がった僕はもうお風呂につかる前の僕とは違う

白黒はっきりさせる矛盾に一同なっとくする一部始終


5月

お休みが多くてとても幸せでこのまま何もせずに死にたい

地獄とはこの世のことを言うんだよ親はぼくらを堕とした悪魔

ありがとうと言わずじまいの優しさがたくさんあってごめんなさい

テトリスみたいな心だから穴が空いたままじゃないとだめなんだ

できるだけ川の上流のほうからぼくの遺灰は流してください

普通ってホントに普通であったらいいのにみんな普通が違う

言うほどに言葉足らずで沈黙の方がたくさん伝わる二人

確実に伝わる言葉選んでて、いつまでも君に追いつけない

伸びきった春をちぎってポケットにしまう君が次にねらう夏

風の方 背中を押して過ぎ去って、行く手阻んで過ぎ去らないな

春気配 秋名残 冬嫌気 夏に囚われている彼が詠む四季

今日という日にしおり閉じて眠った ちゃんと昨日に戻れるように

自分宛ではない誰かへの手紙が届いた時の敗北感

君の歌から月夜雨風空花僕が消えてもまだ短歌


6月

連想をできない孤独な言葉が意味指し示す物は無いんだ

Fホールが空いた心はうるさくて感情全部音楽だった

カップ麺お湯入れ待ちできあがる時にはいないウルトラマン

暑い寒い痛い辛い何も無い所へ行くと言うお爺さん

僕の言葉に合わせて輝く星があって君と同じ名前で

バス停に出逢いと別れがあるとはしらないままに列を成してた


7月

物書きは退屈を字で埋めるべく心傷つけ言葉掘り出す

あれも言えないこれも言えない僕が唯一言う「お疲れ様でした」

自分内宇宙探索 内は外 内向性は反転するよ

誰しもの生の狭間に青春も空虚も老いもひとしく消えて

物陰で運命呪う人だった僕もいつかは日向で呪う

揺れ動く何かがないと風さえも気付かぬ人へ言の葉が舞う

湖を渡る風分冷える汗が乾く前に噴き出すポカリ

死にたいはいかに幸せに生きたいかの裏返し 祭りは後だ

青春ですべて思いついたけれどすべて青春に忘れたんだ


8月

あの雲の天井がこの水の星たらしめてるバケツの端っこ

薄明を見上げればあれがまことの空の高さだ夜光雲立つ

湖の水面は揺らぐ人として揺らぐはずないものは沈んで

誰しもが誰であろうと構わない誰も君を気にはしない 行け

墓参り初心者なのでじいちゃんのお墓の場所がわからない孫

孤独だと伝える人がいるならばそれはもうその二人の孤独

夢にまで見た君だ また出会うとは夢にも思わなかった君だ

愛してる 返事は後でずっと後で僕のお墓に言ってあげて

死にたいと言ってるけれど大丈夫 生きるって死んでいくことだよ

おはようを言わない朝の静けさが必要なんだおやすみなさい

そんな先のことじゃなくて瞬きをする度訪れる未来だよ


9月

人としてあらねば人は超えられぬ人のその先でも人であれ

死にたがる心が心として死に生きたがる心が生き残る

好きです付き合ってくださいそれではこちらの契約書にサインを

かめはめ波をうてないのと同じ理由で青春は放たれなかった

特に言いたいことなんてない方を特に意味なく言いたいんです

明日よりもずっと長くて深い過去の成れの果てが生き抜いて明日

「生きたい」は「死にたい」と言った僕の屍の上に成り立っている

目が眩む対向車通り過ぎても瞬きごとに夜はまろやか

闇に顔を打つと痛いから少し夜が柔らかくなるまで待つよ

カーテンの向こうに誰の魔法やら雨降りの夜に月は差して

ガタガタと風に揺れてもそれなりの壁を隔てて夜は優しい


10月

空腹は最高の調味料だよ二分息止めた後の空気

光から雨になりつつあった風を射る光もやがて雨へと

僕の歌から友恋夢金愛が消えても全部残ってるな

本棚に選ばれし勇者ではないと抜けない本が刺さっている

よく夜が明けない人を見かけるが日が暮れない人は見かけない

この夜を昼寝みたいな気軽さで超えたらきっと朝は軽々

この行列から湖は見えないみんなで徐行してる国道

まっすぐに走っても新幹線の下2回くぐる道なんだね

おにぎりを温めますか?と聞いてほしいけど温めないでほしい


11月

炊飯器を開けた時の幸せの速さで今日は寝る 栗ご飯

かなしみがなみだへ変わるそのまえにきみを突き刺す刃となりぬ

入れ物としての君へとそそがれる人としての君はたぶん僕

忘れ方知ってしまえばすぐ僕は記憶喪失依存症へと

救急車の音聞くたびお迎えかって思うのにスルーされてく

真っ黒にならない空に真っ黒を教えるように消える星々

さようなら、つつがなく水は流れてすべての形にだってなれる

肌を刺す風はすっとずっと伸びて雲待たず雨君待たず恋

光差す透明な月はプリズム夜空に色という色放つ

一粒一粒に書かれ物語は降る私は傘を差せない

きらめきがざわめきを呼ぶ秋草で孤独も枯れると気づいたんだ

人生はどう歩んでも死ぬだから僕ら長い自殺の最中

たぬきちがたまに言う「だも」を許さぬ「だなも」過激派が火放つ森

指揮者だと思っていたら魔術師でなんだそういうことだったのか

紅葉をより色付けるように虹が落ちる青を余らせた秋

嘘のない道で枯れ草を辿った先で根も葉も無い花と君


12月

終わりまで夜を計って記載する完全でない遮光カーテン

もうダウン着たくないって言ってからまたダウン着るまでの青春

翼って無くなるものと知らなくて自分の名前書いてなかった

僕こそが夜の終わりを告げる人なのに3度目のスヌーズ鳴る

揺れるとき匂うとき孤独に届く誰かを切って音立てた風

燃え尽きるものに願いは込められる叶わぬなら燃やせということ

インターナショナルオレンジの夕暮れに東京タワーは消えていく

新しい枕が欲しい君の夜消えるまえなら触れれるひかり

良い仕事をしたと僕は思ってる頭を下げるお詫びを述べる

白くなる雪白くなる前の雪解けると白くなくなった雪

見えぬものは見えない月の裏側いつだって闇満ちる満月

僕が僕救った言葉でも君が君救う歌にはなれないか

まばたきを使い果たして眠る時のいつか尽きる命のまたたき

コンビニで雪見だいふく買ってきて一つを二人でなんてしない

少しだけしっとりとした嫉妬する正しく影で光ったりする

雪道にバンパーとタイヤチェーンと手袋が落ちててかなしけり